アパホテル、驚異の利益率33%を稼ぐ仕掛け

アパホテル、驚異の利益率33%を稼ぐ仕掛け
東洋経済オンライン 3/7(火) 6:00配信

新規開業した「アパホテル 東新宿 歌舞伎町東」。周辺にはすでに4つのアパホテルが存在するが、2020年までに新宿周辺で9軒まで拡大する計画だ

 3月3日、ビジネスホテル大手アパホテルは「東新宿 歌舞伎町東」を開業した。これで新宿エリアには5棟目の開業となる。さらに2020年までに4棟を開業し、9棟2965室体制にする計画を立てる。

客室には元谷外志雄代表の著書や手掛ける雑誌が並んでいる

 会見したアパグループの元谷外志雄代表は「新宿駅は世界最大の乗客数を誇り、歌舞伎町は世界最大の歓楽街。すでに既存のホテルは月間100%の稼働率だ」と満足そうに語った。

 会見前に行った内覧会で客室を見ると、1月下旬に問題となった『理論 近現代史2』は引き続き置いてあった。

 書籍問題について元谷代表は「影響はない。1月も、2月も稼働は好調で過去最高の業績」「今やヒルトンやシェラトン並の知名度になった。いずれ何のことか忘れても(アパの)名前は頭に残る」と意に介さない。

■中国人客は激減したが・・・

 元谷代表によれば、アパはそもそも団体客の予約をほとんど受けておらず、外国人は総宿泊者数の20%程度、中国人は5%ほど。「大陸からの予約は激減したが香港や台湾からの顧客が増えている」という。

 「雨後の竹の子のように、アパホテルが増えた」――と全国紙に表されるほど、都内にアパホテルが急増している。リーマンショック後の不動産価格の下落や低金利を追い風に、アパグループが首都圏への開業攻勢「サミット5」を始めたのは2010年のこと。東京都心部の直営ホテル数は、2010年以前の6ホテルから、現在41ホテルにまで拡大。さらに2020年までに24ホテルの開業を予定している。

 拡大のスピードののみならず、業績も好調だ。これまでほとんど業績を明らかにしてこなかった同社が2月17日、唐突に2016年11月期決算を公表した。

 売上高1105億円(前期比21.4%増)、営業利益は371億円(同16.1%増)。中核のホテル事業に限っても、売上高787億円、営業利益は305億円だった。これは同業の東横インやシティホテルの帝国ホテル、国内最大手のプリンスホテルグループを上回り、圧倒的な水準だ。

都心で怒濤の開業へ

 利益率33%という収益性の高さはどこから来るのか。元谷代表によれば、「東京都心に重点進出したこと」と語る。アパホテルが得意とするビジネスホテルは、シティホテルより人件費や食材費が少なく、収益性が高い。特に都心部は出張や観光需要が見込めるため、「都心のホテルは地方のホテルの3~4倍の収益力がある」(元谷代表)という。

 アパが2010年以降、都心にホテルを増やしてきたのもそうした理由だ。さらに今後は同じホテルでも、客室数がより多いタワー型の開業も加速化させる。

 2015年9月に開業した「新宿 歌舞伎町タワー」(620室)を皮切りに、2018年5月に「西新宿5丁目タワー」(710室)や2019年夏に「両国駅タワー」(1111室)、2020年春に「東新宿 歌舞伎町タワー」(643室)など大型ホテルの開業を計画。六本木には2019年秋に5棟875室、2021年秋にも同エリアで1棟669室で合計1544室の怒濤の攻勢をかける。

 アパグループは1971年創業。高度経済成長の波に乗り、マンションの建設・販売で成長してきた。多角化の一環としてホテルに参入したのは1984年と、業界ではやや後発の部類に入る。

■変形地を取得する独自の手法

 飛躍の契機となったのが「新都市型ホテル」と呼ぶ新形態のビジネスホテルだ。部屋の広さを小さくし、節水シャワーを導入するなど、とことん効率を重視して急成長を遂げた。2007年には自社物件で耐震強度不足が発覚。それを契機に、「不要な不動産を売り払ったことで、リーマンショックの影響を受けずに済んだ」と元谷代表はかつて東洋経済の取材に答えている。

 アパが都内に所有するホテルの不動産登記簿を眺めてみると、確かに2009年頃からの取得が目立つ。開発手法は一貫しており、リーマンショック後に売りに出た安値の変形地を買い集め、ホテルを建設するのだ。不動産専門誌の記者は「大通りから一歩入ったような土地が多く、オフィスにしても高い賃料がとれない物件ばかり」と指摘する。

 同業他社はホテルの運営に特化しており、ホテルの土地建物は不動産オーナーから借り受ける方式をとる会社が多い。一方でアパホテルは、超低金利を背景に、自社で不動産やホテルを保有する直営中心のため、収益性が高く、スピード感のある展開が可能になっている。

 ただ、こうした運営方針は急拡大を可能にする一方で、危険性もはらんでいる。ホテル事業から得られる投資利回りが低下するか、借入金の利払いが増えた場合に、行き詰まる可能性が高いのだ。

多額の借り入れ活用で急成長

 アパが突如、発表した決算にはバランスシートやキャッシュフローが掲載されていない。「公表の予定もない」(会社側)という。ただ信用調査会社によれば、2015年度の中核3子会社(アパホーム、アパマンション、アパホテル)の有利子負債は合計で2000億円に達した。

 公表している2016年度決算で、金利払いを含む営業外収支は33億円のマイナスになっている。個々の子会社の合計に過ぎず、事業領域が重複していることを考慮しても、かなりの金額の有利子負債が存在するのは間違いない。

■ライバルも東京進出を加速

 実際に、新宿の既存5ホテルの不動産登記によれば、このうち4件の不動産をアパマンションやアパホームというグループ会社が所有し、アパホテルが運営を担っているようだ。

 こうした既存の物件にはいずれも都市銀行や地方銀行、リース会社などが根抵当権を設定している。内情に詳しい関係者は「自前で取得した不動産やホテルを抵当に入れ、次の物件を買いに行っている」とも説明する。

 東京には競合他社も進出を進めている。大手不動産コンサルタントCBREでホテルを担当する吉山直樹・シニアディレクターによれば、2020年度までに東京23区内で現在の25%にあたる2.1万室のホテル客室数が供給されるという。吉田氏は「宿泊単価が急上昇したことで、昨年半ば以降は日本人需要が減ったり、民泊に流出している。今後の需給バランスは不透明」と指摘する。

 はたして、このままアパの拡大は続くのか。すべては70歳を超えた元谷代表の手腕にかかっている。