居酒屋「塚田農場」、既存店33カ月割れの理由

居酒屋「塚田農場」、既存店33カ月割れの理由
東洋経済オンライン 2/12(日) 5:00配信

 地鶏料理を売りにした居酒屋「塚田農場」を運営するAPカンパニーが苦境に立たされている。

 2月10日に発表した2016年4~12月期(第3四半期)決算は売上高194億円(前年同期比22.3%増)、営業利益は2.6億円(同58.0%減)。第2四半期の決算説明会で、同社の米山久社長は「成功体験にしがみつきすぎた。塚田農場のブームは去った感がある」と反省の弁を述べた。

 売上高は弁当事業など新事業の上乗せで、増加は続いている。減益の要因は、弁当や海外など新規事業への投資増、事業拡大に伴う本部費用の増加もあるが、最大の要因は主力業態である塚田農場の不振が続いていることだ。

 塚田農場は、宮崎県日南市など、自社・提携先の養鶏場で地鶏を生産し、流通を省くことで消費者向けの提供価格を安くするという生販直結モデルで有名だ。現在は、宮崎県日南市から提携先を増やし、「宮崎県日南市・日向市 塚田農場」「鹿児島県霧島市 塚田農場」「北海道シントク町 塚田農場」といった3業態を展開している。

 接客面でも「名刺システム」といった特徴がある。来店1回目で「主任」と書かれた名刺を渡され、来店2回目で「課長」、5回目で「部長」と来店を重ねるごとに出世し、肩書に合わせたサービスが受けられる。他にも「従業員が客に向けたメッセージを料理皿にチョコレート等で書く」プレートサービスが知られている。

 居酒屋が軒並み苦境に陥る中、APカンパニーはこうした独自の仕組みを武器に、2007年から塚田農場ブランドの店数を増やし、2012年には上場を果たした。

 だが2012年には、居酒屋最大手モンテローザが地鶏料理を提供する居酒屋「山内農場」を立ちあげ、現在は200店超を展開するなど競合も台頭。塚田農場の既存店売上高は2014年5月から2017年1月まで33カ月連続で前年を下回っている。

 にもかかわらず、APカンパニーは前2016年3月期に塚田農場を33店舗を出店。結果、山手線圏内など都心で自社競合を起こすこととなった。「メディアに取り上げられ、ブームが最高潮のときはどこに塚田農場を出しても成り立つと立地選定が甘くなっていた」(米山社長)。

不振店は「焼き鳥」に転換
 大量出店に備え、2014年以降100人単位で新卒社員を採用してきたが、「育つまでの時間を甘く見積もっていた」(同社)。人材確保や教育が十分でないまま店舗数が急拡大したことで、サービスの質が低下した。優先順位を見極められずに、時間がかかるプレートサービスに時間を費やす従業員が目立つなど、オペレーションが円滑に回らなくなった。

■激戦の焼き鳥市場に参入

 今期は出店を抑制し、既存店の建て直しに注力する姿勢を打ち出している。対策は主に2つある。一つ目は、従業員教育の強化だ。急激な出店もあり、2016年3月末の店長の充足率は57%だった。

 店長輩出のため、副店長の教育を重要課題と位置付けた。副店長は入社2~3年目の社員が大半だ。大久保伸隆副社長が現場に立つ「塚田農場天王洲アイル店」に、各店の副店長を1日2人ずつ招き研修をおこなった。2017年3月末に店長充足率は80%に達する見込みだ。

 2つ目は不採算店の整理だ。特に苦戦が目立った東京郊外の小型店など十数店を整理。新業態としてやきとり店「やきとりスタンダード」「やきとりスタンド」を開発し、「塚田農場」から転換を進めている。

 新業態開発の背景は、顧客の低価格志向が強まっていることがある。塚田農場の平均客単価3500~4000円に対し、やきとりは同2000円程度に抑えた。出店費用も塚田農場では1店あたり6000万円ほどかかるが、やきとり店はやや小型のため3000~4000万円(業態転換の場合は400~500万円)に抑えることができる。

 APカンパニーのやきとり店は「塚田農場」からの転換を中心に9店となったが、「立地により、好調な店と悪い店がバラバラ」(同社)な状況で、収益改善の起爆剤となるかは未知数だ。

 さらに低価格のやきとり業態は、鳥貴族を筆頭に、コロワイドが運営する「やきとりセンター」ほか、地場の飲食店も存在する激戦市場だ。これまで地鶏や鮮魚「四十八漁場」など生販直結による高付加価値で売ってきたAPカンパニーが得意とする市場ではない。

 米山社長は「本部コストに10%以上かけるという、調子の良い時の体制を続けていたのが甘かった。1番の売りである商品や本部コストを見直しながら収益を改善していく。この2~3年で投資してきた弁当や海外事業は、来期以降明るい材料として存在している」と語る。

 生販直結モデルで、一世を風靡したAPカンパニー、はたして不振を脱却することはできるのか。