チェンジ・リーダー 立ち位置・仕事の質を見極めよ

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チェンジ・リーダー

立ち位置・仕事の質を見極めよ

 

第7回 エグゼクティブ・サティスファクション(問題ES)症候群

エグゼクティブ・サティスファクション(問題ES)症候群とは、本来のES:Employee Satisfaction「従 業員満足」でなく、役員が満足することに忙殺され現場が疲弊する現象。自分の立ち位置 仕事の質を見極めることが解決のポイント。

ES:Employee Satisfaction「従業員満足」は、職場のやりがいと活性化をもたらし、事業構想の実現のために重要な要素である。しかしもしあなたの職場でこのようなESが蔓延していたら要注意だ。それはExecutive SatisfactionというES、つまり「役員満足度」である。役員が満足することに忙殺され、役員向けの資料づくり、役員へのご進講やレクチャー、役員会議の準備に忙殺されている状態である。

役員が満足するために、文章の言い回しや体裁に1日中掛かりっきりだと事態は深刻である。あるいは、役員会議やご進講の前に、担当者同士でリハーサルを開催するとなると、深刻さの度合いはさらに高まる。

もちろん、企業が組織として適切に機能するためには、役員への説明や根回しは大切であり、これを否定するものではない。しかしながら、事業構想の実現に向けるべきエネルギーのベクトルは、現場や顧客に向かうべきものであり、Executive Satisfactionという役員満足に過剰に向けられることで、現場を疲弊させてしまっていることが問題なのである。

大手企業の本社では、役員向けの資料を一日作っている部署が多々あり、あるいはオーナー系企業ではオーナーや創業家一族の言動や指示に振り回されている現状を目にする。こうした状態が続けば、本来のESである従業員満足度を低下させ、ひいては組織全体の力を低下させ、事業構想どころではなくなる。事業構想を担うリーダーは役員満足に振り回されてはならないのだが、そうならないのが実情である。

エグゼクティブ・サティスファクション(問題ES)の事例

その1

    1. 部長:常務へのご進講資料は出来たか?
    2. リーダー:この通り出来上がっています。
    3. 部長:常務は老眼なんだから、もっと字のポイントを大きく!
    4. リーダー:もっと本質的なことをアドバイスしてほしいのに…

 

その2

      1. リーダー:来週、副社長がうちの職場に来ることになった。想定質問を完璧に用意してくれ!今日はこれだけに集中して、他の業務は中止!
      2. 部下:新製品開発の重要な時期なのに…

では、なぜエグゼクティブ・サティスファクションが蔓延するのだろうか?

まずは「報告を求め過ぎる役員」側の問題である。自ら社内の現場に出ることもなく、社外で真剣勝負をすることもなく、会議室の上座に座っているだけの困った役員陣は、会議が開催されないと不安であり、出てくる資料も完璧でないと不満である。しかし、その資料が出来上がるまで、いかに多くの人と時間のコストがかかっていることに気づかない。同じ労力とコストを別のベクトルに向けるべきということにも気づいていないのである。

次に「役員へのアピールをしたがる管理職」側の問題である。事業構想の実現のために未知の領域に取組み、社外のパートナーや潜在顧客に働きかけ、挑戦を続けることが重要であるにもかかわらず、社内で、同じ社内方言、決まった序列、分かりやすい落としどころで社内営業をしている方が楽だとなってしまう管理職がいることも事実だ。リーダーの上司がそうなることもあるし、リーダー自身がそうなることもある。

リーダーの行動は職場全体に影響を与える。率先垂範のリーダーであれば部下も同じ行動様式になり、報告ばかり求めるリーダーであれば部下も同じように振る舞う。リーダーが役員満足に走れば、職場もそうなってしまうことをチェンジ・リーダーとして自覚して欲しい。

では、職場にはびこるエグゼクティブ・サティスファクション(問題ES)をどのように解決すべきか。

自分の立ち位置を見極めよ

日々業務に没頭していると本来自分がなすべき仕事の立ち位置、リーダーとしてのポジショニングを忘れがちになる。そこで自分の仕事を「内向きか、外向きか」「上向きか、現場向きか」といった2軸で整理してみる(図1)。縦軸の「内向き」は社内向けの仕事、「外向き」は社外向けの仕事を指す。横軸の「上向き」は上司・役員向けの仕事、「現場向き」は社内の最前線向けの仕事である。事業構想を担う者は、本来右上の外向き・現場向きの率先垂範型リーダーであるべきだ。あるいは右下の内向き・現場向きで、最前線で研究開発に取り組む人もいるだろう。さらには左上の外向き・上向きで、役員を担ぎ出したトップ営業を仕掛ける人もいるだろう。問題なのはリーダーが左下の内向き・上向き仕事に注力して、社内ばかり目が行って、役員満足度を上げることに執心することである。チェンジ・リーダーは自分の立ち位置が、この四つのゾーンのどれに当てはまるか見極め、エネルギーをどこに向けるべきか胸に手を当て考えてほしい。

仕事の質を見直せ

次に自分の仕事の質を見直すことである。図は、仕事の質を構造化を示したもので、下からルーティン業務・作業⇒調整・根回し⇒深い思考・深い話し合い⇒決断・行動となる。リーダーがすべきは、「決断・行動」である。しかし問題ES症候群の職場は、リーダーが調整や根回しに追われてばかりだ。

一週間を振り返り、自分の日々の行動が図2のピラミッドのどこに置かれるかもう一度見直してほしい。実は自分の多く活動が調整と根回しにプロットされているのではないだろうか。

ESは、Employee Satisfaction「従業員満足」であり、Executive Satisfaction「役員満足」でない。確かに役員への的確な報告や組織としての合意形成は重要であるが、これが過剰になり過ぎることが問題であり、自分の仕事の立ち位置を見極め、仕事の質を見直すことがチェンジ・リーダーの責務である。

さて、あなたの職場のESは大丈夫だろうか?