地銀、長崎で営業攻勢 「ふくおかFG・十八銀統合」を商機に

 

地銀、長崎で営業攻勢 「ふくおかFG・十八銀統合」を商機に
2016/12/10 2:00日本経済新聞 電子版

9-1 ふくおかフィナンシャルグループ(FG)が十八銀行との統合を発表して以降、長崎県内の金融市場が動いている。企業が借入先の配分を調整することを見越し、地銀各行が営業攻勢をかけているためだ。日本経済新聞社の調査では、北九州銀行は15人体制で新規開拓に注力、西日本シティ銀行も県内で増員した。九州FGも営業強化を検討する。

 日本経済新聞社が九州の第一地銀・グループと地元の長崎銀行に、長崎での営業展開に関して書面で調査を依頼(ふくおかFGの福岡・親和・熊本の3行と、十八銀をのぞく)。11月25日から今月7日までに全行の回答を得た。

 2月の経営統合の基本合意発表以降で、長崎県内の企業から新規の相談があると回答した銀行は県内外で5行あった。「長崎の企業から、これまで親和銀と十八銀、もしくは福岡銀と十八銀の2行取引を続けてきたが、合併によってふくおかFGだけの取引になってしまうことを嫌い、相談が寄せられている」(筑邦銀行)という。敏感な企業から動き始め、周囲の銀行には、新たな商機が生まれている。

 2月以降で、長崎での営業展開に変化がすでに「ある」と回答した銀行は3行だった。山口FGの北九州銀行は営業部隊を増員し、15人体制で長崎の営業にあたっている。「今後もさらなる営業人員の増員を検討している」(同行)という。山口FGはコンサルティング営業に力を入れており、本州とのネットワークを持つ強みをいかして新規開拓を狙う。

 西日本シティ銀行は「統合が直接の要因ではない」としながらも、「営業エリアの拡大の中計戦略にもとづいて長崎県内の店舗の営業担当を増員した」。同行と同じ西日本フィナンシャルホールディングス傘下の長崎銀行は地元で19店を展開しており、「新規先の開拓に力を入れている」。1位・2位行の合併で、第三極として存在感を示す好機で、統合発表後の新規の相談は2億円を超えたという。

 九州FGのほか2行は「今後の営業強化を検討している」と回答した。九州FGは肥後銀行が長崎に支店を持つが、鹿児島銀行からも人事交流で2人を派遣している。上村基宏社長は、九州FG創設当初は福岡や沖縄での営業強化に意欲を示していたが、2月以降は、「長崎」と口にする機会が増えている。鹿児島市や熊本市の店舗から人員を展開していく考えだ。

 対メーンバンク 過度な依存警戒 顧客企業

 メーンバンクは事業計画策定に関与したり、資金調達をまとめたりと、企業にとって特別な存在だ。帝国データバンクによると、長崎県内で十八銀か親和銀がメーンバンクの企業は85%にのぼる。借り入れのバランスを保つため、大きな資金移動が起きる可能性もある。

 福岡県2位だった旧西日本銀行と同3位の旧福岡シティ銀行が合併して西日本シティ銀行が誕生した時は、両行からの借り入れがメーンバンクの福岡銀行を上回った企業で、多額の融資調整が起きたという。一方、今回の統合は、「すでにメーンバンクで序列は変わらないから、融資調整は起きない」(九州の地銀幹部)との予想もあった。

 ただ、メーンバンクの存在感が大きくなりすぎるのは不健全な状況だ。調査をしてみると、企業がこれまで取引のなかった銀行に相談を持ちかけ、すでに調整が始まっていることがわかった。

 一方で、ふくおかFGには、公正取引委員会から、競争環境を保つため、企業や他行の自発的な動きを超えた構造的な問題解消措置が求められているようだ。ふくおかFGと十八銀は地域の未来のために強固な銀行を作る大義と、顧客と築いた関係性を保ちたい思いの板挟みの中で、難しい決断を迫られる。