フィンテックで特許訴訟 中小向け会計ソフト巡り フリー、同業のマネーフォワード相手に

フィンテックで特許訴訟 中小向け会計ソフト巡り
フリー、同業のマネーフォワード相手に
2016/12/9 0:16日本経済新聞 電子版

96958a9e889de3e2e6e4ebe5e7e2e2eae3e0e0e2e3e4869be3e2e2e2-dsxmzo1046978008122016ti1001-pb1-11 金融とIT(情報技術)を融合したフィンテック分野で有力企業の訴訟が勃発した。クラウド会計ソフトのfreee(東京・品川、フリー)は8日、同業のマネーフォワード(東京・港)が資金の出入りデータを自動仕訳する技術の特許を侵害したとして差し止め請求訴訟を起こしたと発表した。新市場でのシェア争いが引き金となった格好だが、訴訟の行方次第では成長産業の育成に影響がでかねない。

 フリーが侵害されたと主張しているのは2014年3月に登録された中小企業向け会計ソフトの特許。銀行口座の明細情報に基づき、様々な資金の出入りをネット上で自動仕訳する。入力の手間は大幅に省ける。同ソフトのユーザーが13年3月の発売以降、約60万事業所まで増えた原動力だ。

 例えば「ケーキ屋A JR大阪駅前店 5000円」の明細を読み取ると、品目、取引先、商業施設などのキーワードから使い道を推測。「JR」より「ケーキ屋A」を優先し、「交通費」ではなく「接待費」に仕訳する。このように膨大な明細を高精度に処理する。

 フリーが問題視するのは、マネーフォワードが8月に競合サービスで機械学習を活用した自動仕訳機能を採用したことだ。これが特許に抵触すると判断、9月末に協議を申し入れる。相手は事実関係の調査に1~2カ月かかるとして日程再調整を求めたが、フリーは待てなかった。マネーフォワードは8日に「特許侵害の事実は一切ない」とのコメントを出した。

 クラウド会計ソフトはフィンテックの有力分野だ。調査会社デジタルインファクト(東京・文京)によると、同分野の首位はフリーでシェア41%。弥生の26%、マネーフォワードの13%と続く。フリーとマネーフォワードは各方面から出資を受け、それぞれ資本金は62億円強(資本準備金含む)、23億円弱。将来性を評価されている証しで、フリーの佐々木大輔社長とマネーフォワードの辻庸介社長は業界では著名だ。

 急成長分野では競合企業が増え、シェア争いは激しくなる。先行したヒット製品を同じ機能で追いかけるケースは少なくない。携帯電話向けゲームでグリーがディー・エヌ・エー(DeNA)を著作権侵害で訴え、13年の最高裁でグリーが敗訴したのは記憶に新しい。知財訴訟に要する期間は長く、費用もかさむ。人材や資金が乏しいベンチャー企業には負担だ。

 それでもフリーは提訴した。アンダーソン・毛利・友常法律事務所の城山康文弁護士は「訴訟費用の元を取れなくても、競合企業に模倣をさせない抑止力になる」と解説する。

 フォーサイト総合法律事務所の大村健弁護士は「フィンテックの有力企業が訴訟対応で開発に注力できなくなれば、業界の発展が遅れかねない」と指摘する。新産業育成には参入企業が技術をクロスライセンスし、需要を喚起する選択をすべきだとの考えも多い。