カカオ 木1本年2万円…1年後に手作りチョコ1キロ届く

カカオ 木1本年2万円…1年後に手作りチョコ1キロ届く
毎日新聞2015年12月16日 14時00分(最終更新 12月16日 14時00分)

91 (2)ベトナムの農園でカカオ豆を収穫する富美子さん

 福岡県飯塚市のチョコレート専門店「カカオ研究所」がベトナムのカカオ農園と提携し、日本初となる「カカオツリーのオーナー制度」を始めた。ベトナム産カカオ豆で作ったチョコレートの独特の味わいに魅せられた店の夫婦が、西アフリカなど主要産地の影で苦戦するベトナムの農園を支援しようと発案した。1本につき年2万円を支払うと、1年後に1キロ分の手作りチョコレートが現地から届く仕組みだ。

 カカオ研究所は、飯塚市の菓子会社で約20年間、社長を務めた中野利美さん(68)が昨年12月、妻富美子さん(60)とオープンさせた。カカオ豆の加工からチョコレートに成形するまで全工程を一つの工房で手がける、完全手作りの店だ。

 3年前に社長を退任した後、東京で偶然見つけた、同じく手作りの店のチョコレートの味に感動し、カカオ豆の仕入れ先を教えてもらったのが始まりだった。利美さんは「産地や焙煎(ばいせん)の仕方など少しの違いで他にはない唯一の味に仕上がる」と豆から作る魅力を話す。

 コロンビアやガーナなど十数カ国のカカオ豆で試作を重ね、ベトナム南部のドンナイ省にある農園の豆にたどり着いた。強い酸味が特徴で、酸味を消す添加物や乳化剤を使わずにチョコレートに仕上げると、食べた後に豆本来の酸味と香りが広がった。

 ただベトナムのカカオ豆生産は西アフリカのコートジボワールなど主要産地と比べて小規模で、収穫後に欠かせない発酵や乾燥技術も遅れている。現地の農園も厳しい経営を強いられていた。

 利美さんは月に1回のペースで現地を訪れ、技術指導に乗り出した。だが今までのように商社経由で豆を売るだけでは、収入は増えない。そこで農園内に工房を設け、チョコレートを作って売ることを提案。利美さん監修の工房が来春には完成予定だ。さらに、カカオツリーのオーナー制度を考えつき11月からスタートさせた。

 「オーナー」になると、契約農園のカカオの木にネームプレートがつり下げられ、年に3回、成育状況を撮った写真がメールで送られてくる。来年9〜10月ごろ収穫し、現地の工房で作ったチョコレート(50グラム入り20枚)が11月には郵送で届く−−という仕組みだ。

 募集期間は来年2月15日まで。契約農園には約1000本の木がある。実際に木の所有権を得られるわけではないものの、すでに約150人から申し込みがあったという。「メード・イン・ベトナムのチョコレートを日本や世界に広め、ベトナムの農園の技術向上と収入増を後押ししたい」と意気込む利美さん。JR飯塚駅近くに工房と店を構えるカカオ研究所(0948・21・1533)には、ベトナム産の豆で作ったチョコレートも並ぶ。【末永麻裕】

カカオ豆生産

 カカオ豆を輸入している商社のコンフィテーラ(東京)によると、世界のカカオ豆の6割をコートジボワールとガーナ産が占める。1位のコートジボワールの年間生産量約180万トンに対し、ベトナム産は約1万トン。カカオ豆は新興国のチョコレート需要増などで国際的な取引価格が高騰しているが、病虫や干害に弱く栽培に手間がかかるため生産量を一気に増やすことは難しく、末端の農家の収入増にはつながっていない。

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